「測定できなければ管理できない」ってほんと?

日本でKPIという考え方が浸透してきたのは、ドラッガー氏が「測定できなければ管理できない」と著書に書いている。というような話が広まったところに端を発していると思われます。ただ、私の知る限りドラッガー氏はこのようなことは書いていません。

彼が書いたのは「If you can’t measure it, you can’t improve it」。つまり『測定できなければ改善できない』という言葉です。
これはその通りだと思います。「改善」というのは今の状態があって、それをより良い状態にしていく、という活動です。したがって、今の状態を何らかの方法で測定しておき、それがどうなれば良くなったと言えるのか、という目標を設定する必要があります。

それでは、なぜこの言葉が先に書いたような「改善」ではなく「管理」になったのか、です。「測定できなければ管理できない」に一番近い言葉を残しているのは、品質管理(QC)の祖とも言われているデミング氏のこの言葉
「It is wrong to suppose that if you can’t measure it, you can’t manage it – a costly myth」。
このif以降がまさに上述の日本語訳にぴったりです。

ただ、この全文を読むと明確ですが「計測できなければ管理できないと考えるのは誤りであり、それは代償の大きな神話です。」という風に、明らかに「計測できなければ管理できない」という考え方を否定します。

なぜ、デミング氏がこの言葉を残したか、についてこれは私の解釈ですが、デミング氏の専門分野である品質管理(Quality Control)に出てくる「管理」と、日本語では「経営」に近いですがしばしば「管理」と訳されるManagementの違いを言いたかったのではなかったかと推測しています。

コラム『二つの管理』参照

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