3.活用する

DX推進における「活用」の重要性

デジタルトランスフォーメーション(DX)において最も重要なのは、分析された情報をしっかりと「活用」することです。逆に言えば、活用できない情報をどれだけ蓄積・分析しても、それは単なる自己満足に過ぎません。

DXの基本的なプロセスは「蓄積→集約・分析→活用」となりますが、実際にDXを推進する際は、この順序を逆に考えることが重要です。「何のためにDXを行うのか?」という目的を明確にしないまま、ただやみくもに「とりあえずデータをまとめよう」と進めるのは誤りです。もちろん、既に保有しているデータで何が見えるのかを試すことには一定の価値がありますが、進め方が全くわからない場合を除き、このアプローチはあくまで補助的な手段です。

最近、「BIツールを使った可視化でDXを推進」というキャッチフレーズが増えてきました。こうした言葉に先進的な取り組みだと飛びつく企業も少なくないでしょう。また、「AIが課題を抽出する」といった表現もよく耳にします。しかし、これらは「道具や手段」について述べているだけで、DXの本質には触れていません。

目的を持たずに手段を決定し、BIツールで無意味な可視化を行っても、誤ったDXを進めるだけで、真の改革や改善にはつながりません。まずはDXの目的を明確にし、何を目指しているのかをはっきりさせることが必要です。

経営管理分野におけるDXの目的

経営管理分野におけるDX推進の目的は企業ごとに異なります。いこで述べる目的がすべてではありませんので、具体的な推進には適切な目的を設定してください。目的を議論するだけでも、経営課題に対する共通認識が深まるでしょう。

DXの究極的の目的は「企業の存続と成長」です。この目的は言うまでもなく重要ですが、具体的に何をすべきかはわかりにくい場合もあります。そこで、もう少し具体的な目的を考えることが重要です。以下のような目的が考えられます。

  1. 成長分野へのリソースの重点配分
  2. 地域戦略の再構築
  3. 既存市場からの一部撤退による選択と集中
  4. 新規事業分野の拡大
  5. 営業部門における直間比率の改善
  6. 海外事業の採算性向上
  7. コストカットによる収益改善

簡単に言えば、「何をどうしたいのか」というレベルで目的を設定することが必要です。

「全社の経営管理DXなのに、なぜ1つの戦略レベルの目的に絞るのか?それでは全社的な改革にはならないのでは?」と疑問を持つ方もいるかもしれません。しかし、私の経験上、それはまったく逆です。「何でも見える」は「何も見えない」に等しいと言えます。明確な問題意識を持ち、その問題に対する課題を浮き彫りにすることで初めてDXが意味を持ちます。

まずは戦略レベルでDXを検討し、それをつなげていくことで、全社にとって最適な形を作っていきましょう。

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